2025-26年度の院生融合プロジェクトに採用されたお二人に、このプロジェクトについて様々なことをお聞きしました。
是非ご覧ください!
【共同研究者名】
櫻井 優輔 さん(生物資源環境科学府 資源生物科学専攻 D2)
博士論文研究テーマ「マウス精原細胞分化過程における生殖細胞間架橋(ICB)断片化機構の解明」
瀧上 世奈さん(理学府 化学専攻 D2)
博士論文研究テーマ「脂質二分子膜と両親媒性ペプチドとの相互作用」
【共同研究タイトル】
細胞培養効率向上に向けた細胞膜流動性の人為的操作および細胞増殖性制御法の確立
【共同研究概要】
本研究は、細胞膜の流動性に着目し、その人為的操作による細胞膜流動性の制御と高効率な培養条件の確立を目的とする。増殖性の細胞を対象に、リン脂質やコレステロールからなるモデル生体膜を作成し、蛍光分光法により膜の流動性・ドメイン構造を解析する。得られた知見を基に培養条件を最適化し、増殖性変化に関与する遺伝子を同定することで、再生医療や細胞工学分野への応用を目指す。

設問1. 共同研究を始めるきっかけは?
昨年のAI共創型越境科目で知り合い、お互いの研究内容に興味を持ったことがきっかけです。櫻井は分子生物学的観点から細胞の増殖性や接着などの細胞挙動の解析を行なっており、瀧上はコロイド界面化学・物理化学的視点から、モデル膜を用いた外部刺激(抗菌ペプチド)に対する膜の変形ダイナミクスの解析を主な研究対象としています。どちらも“膜の挙動”について着目している点が共通しており、互いの研究の強みを活かすことで、各々の不足している部分(櫻井は分子レベルでの考察、瀧上は実用性など)を補うことができ、かつ多角的な視点で研究ができると考え、共同で研究を行うことになりました。
設問2.院生融合プロジェクトに採択された感想は?
(櫻井)初めて研究費の採択を受けたので、採択された驚き4分の1と嬉しさ4分の3の感情でした。細胞膜脂質に着目した研究は経験がなく、研究に対する若干の楽しみも湧きました。
(瀧上)大変光栄に思っております。異分野の学生と一緒に研究をすることができるSPRINGならではの事業であると思うので、大変貴重な機会をいただきありがたいです。また、私の研究は基盤研究で、分子レベルのかなりミクロな状況での実験・考察を行なっているため、櫻井さんのように、より実用的な研究を行なっている方と共同研究をできることを、大変嬉しく思っています。
設問3.現在の共同研究の進捗状況は?
現在は、標的としている細胞のその状態による細胞膜組成と、その関連遺伝子の変動まで解析をおこなっています。今後は、上記の解析結果より、構造・成分を単純化したモデル膜を作成し、細胞分裂のスピードなどに膜の流動性や混和性がどのような影響を与えるのかを、分子レベルで解析していきたいと考えています。
設問4.共同研究実施中に得た新たな「気づき」は?
(櫻井)研究を進めるスピード感が違うことに気づきました。私は、生物(マウス)の成長を待ち、そこからサンプルを調製して、実験に取り掛かっているため、短くて1週間、長くて8週間くらいのスケジュール感で研究を行っています。瀧上さんは、短くて3日間くらい、長くても2週間くらいのスケジュール感で実験を行うことができています。
(瀧上)実際の生物の細胞膜を解析するのに、様々な実験手法があることに驚きました。ただ、細胞膜を採取して解析するだけではなく、遺伝子から組成を予測するなどといった手法もあり、私自身勉強になることばかりです。
設問5.計画(申請)時点では思い至らなかった、共同研究の難しさや厳しさは?
(櫻井)それぞれの研究のスピード感による、試薬等の消費・購入スピードや研究費の配分が難しかったです。
(瀧上)モデル系ではなく、実際の生物を扱う難しさを感じています。私自身は主に合成された試薬を用いて実験を行うため、自身のスケジュールなどに応じて実験を行うことができるのですが、櫻井さんの研究では、生き物の成長スピードなどに左右されやすいため、実験自体を行うことの難しさを感じています。また、実際の細胞はかなり複雑な系で構成されているため、細胞膜中の脂質組成だけであっても、解析が想像以上に難しいと感じています。
設問6.指導教員の先生方、研究室の周りのメンバーの反応は?
(櫻井)指導教員の先生には喜んでいただき、研究内容についても随時、報告・相談しています。研究の進め方や方向性など、学生のみで判断に困るときは、指導教員の先生に相談し、意見をいただいています。
(瀧上)それぞれの指導教員の先生より、実験の進め方など様々なサポートをしていただいています。また、私が他分野の方と一緒に、より実用的な実験を行うことで、自分が行なっている基盤研究がこのようなことに役に立つのか!など、研究室メンバーにとっても何か良い刺激になってくれたらいいなと思っています。

設問7.実際の共同研究の進め方は?
プロジェクト申請書作成時は、オフラインで理系図書館に集まって、申請書の内容について話し合いました。採択後は、月に1回オンラインミーティングを行い、それぞれの解析結果を報告しています。それ以外にもSlackを利用して、随時、実験結果を共有しています。
設問8.研究費予算の使い道は?追加の予算があったら何ができた/したい?
研究予算費は、現在は、細胞膜組成の解析や、モデル膜の作製、膜の分子分布の解析などの試薬・器具などに主に使用しています。今後は、細胞膜の流動性・混和性解析のための試薬・器具・施設利用費などに使用させていただく予定です。もし追加の予算がいただけるのであれば、LC-MS/MSを用いたより詳細な細胞膜リン脂質組成の測定を行いたいです。そこで使用するカラムが非常に高く、購入するかどうか現在も協議中です。さらに、もし興味を持ってくださる企業様などがいらっしゃれば、共同研究費などにも使用してみたいです。
設問9. この共同研究で学会発表や論文の執筆の可能性は?何パーセント?
学会発表は50%、論文の執筆については5%未満くらいだと、現在では考えています。採択期間中に、学会発表できるレベルまでデータをそろえたいです。
設問10.この共同研究の今後の展望・抱負は?
細胞の状態による、遺伝子発現変動に伴う細胞膜組成の変化とその流動性との関連性という新規性が見つかればいいと考えています。実際の細胞を用いて研究を行なっているため、難しいテーマかもしれませんが、二人で力を合わせて一生懸命頑張ります。
設問11.お二人それぞれの将来の夢、目指す人物像は?
(櫻井)ユーティリティかつ専門性も高い研究者を目指したいです。
(瀧上)自身の専門性を強みとしながらも、様々な角度から考え、色々な分野の研究者と交流ができる、日本・世界で活躍ができる研究者になりたいです。
設問12.プログラム生の後輩へ、院生融合プロジェクトや共同研究にチャレンジする事へのメッセージをどうぞ。
(櫻井)K2-SPRINGでは、思い付きを実現してくれる研究者を見つける手助けを行ってくれているように感じます。ほかの分野の学生/研究者との共同研究は、自分の研究の長所短所を見つめなおすことができるいい機会になります。また、他分野を広く理解できるようになります。研究費は応募しないと採択されないので、その思い付きに協力してくれる学生とともに、院生融合プログラムに応募して、研究費獲得を目指しましょう。
(瀧上)研究を行なっていると、行き詰まりを感じたりすることもあるかと思います。しかし、他分野の研究者などとの交流をすると、自身の専門分野だけではなく、他分野の知識などもつき、かなり視野が広くなり、違う視点から思いもよらぬ閃きがあるかもしれません。様々な視点から理解する、知識をつけることは、自身の研究にも、社会に出てからも大いに役立つスキルだと思います。学生の時にこのような機会をいただけることは本当にありがたいことだと思うので、ぜひ挑戦してみてください!