國久保 透真さん(理学府)の論文がChemical Science誌にアクセプトされました。
おめでとうございます!
著者名
國久保 透真・Raúl Castañeda・Muralee Murugesu・Jaclyn L. Brusso・山内 幸正・
小澤 弘宜・酒井 健
所属学府
理学府 化学専攻
論文タイトル
白金中心へのヨウ化物配位による波動関数リークの増大が促す白金二核光触媒の赤色光駆動型水素発生の向上
Enhanced red-light-driven hydrogen evolution by a diplatinum photocatalyst by the larger wavefunction leakage of iodide coordinated to the platinum center
要約
以前私たちは、新規白金二核錯体 Pt2(bpia)Cl3(bpia = bis(2-pyridylimidoyl)amido)が、一重項から三重項への直接遷移(S–T遷移)を経由して水溶液中で赤色光駆動型の水素発生反応を促進することのできる世界初の分子性光触媒であることを報告しました(Toma Kunikubo, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2025, 64, e202418884)。しかしながら、この錯体の赤色光下での光触媒活性は依然として低く、さらなる性能向上が求められていました。本研究では、3つのCl–配位子をI–配位子に置換した Pt2(bpia)I3 が、Pt2(bpia)Cl3 と比べて著しく高い光触媒活性を示すことを見出しました。Pt2(bpia)骨格に特有の S–T 遷移吸収特性や励起状態の酸化還元特性には大きな変化は見られませんでしたが、Pt2(bpia)I3 は三重項励起状態に対する還元的消光効率が高く、結果として 水素生成反応速度が大幅に向上しました。この電子移動速度の向上は、ヨウ化物の優れた電子受容特性とその波動関数の広がりの大きさに起因し、犠牲還元剤からの外圏電子移動が促進されるためであることを、実験的および計算化学的観点から明らかにしました。
ジャーナル名
Chemical Science
関連するSDGs
SDGs 7 (エネルギーをみんなにそしてクリーンに)
喜びの声
赤色光のような低エネルギー光でも水素を生み出せる分子を目指し、試行錯誤を重ねてきた研究がようやく形になりました。本研究成果は、英国王立化学会 (RSC) が刊行するフラグシップ誌 Chemical Science に掲載されました。これまでの研究で得られた知見をもとに、より長波長の光を活用できる分子光触媒の設計に挑戦し、赤色光下での白金二核錯体の水素発生触媒活性を大きく向上させることに成功しました。なかなか成果が出ず苦労した時期もありましたが、最後まで諦めずに取り組んだ努力が報われたと感じています。この成果が、次世代の持続可能なエネルギー変換研究の一助となれば嬉しく思います。今後も、より高効率で持続可能なエネルギー変換系の実現を目指して研究を進めていきたいです。ご指導いただいた先生方や、共に議論を重ねた共同研究者の皆様に、心より感謝申し上げます。