川上 えりか さん(生物資源環境科学府)の論文がEuropean Journal of Soil Biology誌にアクセプトされました。
おめでとうございます!
著者名
川上 えりか ・菱 拓雄・片山 歩美
所属学府
生物資源環境科学府 環境農学専攻
論文タイトル
Effects of understory degradation induced by sika deer on soil microarthropods in beech forests: comparison between two different climatic conditions
シカによる下層植生の衰退がブナ林の土壌動物群集に及ぼす影響:二つの異なる気候条件の比較
要約
日本各地で、個体数増加したシカによる採食によりササ類(Sasa spp.)が優占する下層植生が減少している。下層植生の消失は土壌動物群集の個体数を低下させる可能性がある。しかしながら、異なる気候条件下における下層植生の消失が土壌動物群集に及ぼす影響は、依然として十分に解明されていない。九州山岳地域と山陰山岳地域の6つのブナ林において、下層植生としてササが残存する地点(ササ残存区)と消失した地点(ササ消失区)の間で、土壌動物、土壌特性、および土壌侵食速度(cm/年)を比較した。九州地域は山陰地域よりも降雨量が多く、積雪量が少ない。九州ブナ林では、土壌動物群集の個体数がササ消失区でササ残存区より有意に40%低かったが、山陰ブナ林では有意な差は認められなかった。両地域とも土壌容積重はササ消失区で有意に高かったが、ササ類の消失による影響は九州ブナ林でより大きかった。これらの結果は、ササ類の消失が土壌流亡を招き、土壌動物群集の生息可能な空隙空間を減少させることを示唆している。さらに構造方程式モデリング解析により、ササ類の消失に伴う土壌侵食は気候条件の影響を受け、侵食による土壌容積重の増加が土壌動物群集の個体数減少を促進することが示された。この知見は、下層植生の消失が土壌容積重の変化を介して土壌動物群集に及ぼす影響が気候条件によって異なり、侵食リスクの高い地域でより顕著であることを示唆している。我々の結果は、特に土壌侵食の影響を受けやすい気候条件を有する地域において土壌生物多様性を維持するためには、下層植生の保全対策を急ぐ必要があることを示唆している。
ジャーナル名
European Journal of Soil Biology
関連するSDGs
SDGs 13 (気候変動に具体的な対策を) SDGs 15 (陸の豊かさも守ろう)
喜びの声
個体数増加したシカにより、全国各地の森林ではササ類などの下層植生の消失が問題となっています。本研究では、下層植生の消失が土壌に棲む生き物の個体数や多様性を劣化させていることが分かり、その影響が土壌侵食が発生しやすい多雨・少雪地域で大きい可能性を示しました。今後のシカ対策・植生保全対策に役立つ知見となればと考えております。