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2025年度 院生融合プロジェクト 学生インタビュー#4

2025年度の院生融合プロジェクトに採用されたお二人に、このプロジェクトについて様々なことをお聞きしました。
是非ご覧ください!

【共同研究者名】
松瀬 萌々香さん(法学府 法政理論専攻)
SHAH MANAN VINODさん(システム情報科学府 情報理工学専攻)

【共同研究タイトル】
International Comparison of Ethics and Legal Issues in AI Diagnosis
人工知能診断における倫理的・法的課題の国際比較

【共同研究概要】
本研究は、複数の国における AI 診断規制の比較を通して、医療における AI の理想的な法的枠組みを提案することを目的とする。なお、既存の規制のデータ収集、政策文書から主要なテーマを抽出するための自然言語処理 (NLP)、AI 診断に関連する法的紛争を分析するためのケーススタディ比較など、複数の方法論を採用する予定である。
この研究により期待される成果は、AI 医療法の比較データベースと、AI 規制を世界的に標準化するための政策の提案である。


(左)松瀬 萌々香さん(右)SHAH MANAN VINODさん

設問1. 共同研究を始めるきっかけは?
きっかけは創発科目Aでのやりとりでした。そこでは、医療分野におけるより安全で公正なAIについての関心を共有し、法と倫理(松瀬)とAIと工学(マナン)という互いのスキルが補完的であることを確認しました。
話し合っていくうちに、断片的で急速に変化する医療AIの規制に関心が向き始めました。そこで、日本、EU、米国の規制を比較し、責任、透明性、プライバシーといった共通テーマを抽出することを通して、研究者や臨床医が利用できる統合的な質問応答システムを提案するというアイデアを打ち立てました。プロジェクトのコンセプトは、比較データベース作成と政策提言を目指すものとなっています。

設問2.院生融合プロジェクトに採択された感想は?
とても大きな励みになりました。本研究は、AI工学と情報法をつなぐことが政策立案者の支援に役立つだけでなく、一般の人々が政策情報を理解することに繋がるものです。それは、情報へのアクセスを容易にする新たな層を加えることでもあります。また、採択いただけたことは、私たちが提案した二つの主要な成果物 ― 比較データベースと政策に関する質問応答システム ― を必ず実現しなければならないという健全なプレッシャーも生み出しました。助成金という枠組みは、内部的な成果にとどまらず学会発表を目指す自信も与えてくれました。構想を実行に移すための機械と資源を頂き、多大なる感謝と責任を感じています。

設問3.現在の共同研究の進捗状況は?
技術面では、環境、データベース、ロジック、そして多言語対応のチャットアプリケーションを構築しました。翻訳レイヤーによって、日本語の情報源も英語のものと並行して検索できるようになっています。
法的側面では、精選された文献リスト(論文、書籍、ガイドラインなど24以上の情報源を含む)を整理して収集し、新しい項目も継続的に追加・検証されています。さらに、複数地域からの回答抽出において、システムが踏んだステップとあわせて比較分析も開始しました。現在は、検証およびテスト計画を進めているところです。

設問4.共同研究実施中に得た新たな「気づき」は?
私たちは、政策文書の分析には特有の課題があることに気づきました。各ページがそれぞれ独自の参照文献を持つことが多く、意味を保持しながらデータを整理する作業を複雑にしています。
さらにもう一つの洞察は、法域ごとに用語の使い方が異なる点でした。英語で使われる用語が日本の法概念と必ずしも直接対応せず、文脈に基づいた解釈が求められます。
これらの経験から、効果的な分析には構造的な複雑さと語学的なニュアンスの両方を考慮する必要があると学びました。重要なのは、技術的手法と法的専門知識を組み合わせることで、これらの微妙な点を捉え、正確かつ学際的な洞察を生み出せると経験をもって感じました。

設問5.計画(申請)時点では思い至らなかった、共同研究の難しさや厳しさは?
現在、私たちは米国、EU、日本からのデータ収集に注力しています。当初は、学術誌や政策文書が国ごとに整理されていると予想していましたが、多くの論文は比較アプローチを用いているために複数の地域にまたがる情報を組み合わせています。この重複により、地域ごとにデータを明確に分割・割り当てることが難しくなり、分析に先立って地域固有の内容を切り分けるために追加的な作業が必要となっています。

設問6.指導教員の先生方、研究室の周りのメンバーの反応は?
教授陣からは、関心と同時に課題認識を示す反応がありました。工学の側面では、データ駆動型の分析が規制や実務に対して有意義な知見を明らかにできることへの期待が寄せられています。一方、法学の側面では、膨大な政策文書や法律を扱う難しさが強調されました。
進展は、既成のデータセットや生成的な回答に頼るのではなく、各文書を丁寧に読み解くことに大きく依存しています。さらに、ラボのメンバーからも学際的なアプローチは新鮮だと受け止められており、新たな議論の視点を切り開くものとなっています。

設問7.実際の共同研究の進め方は?(オンライン、研究室に集まって、など)
毎週対面でミーティングを行い、実装した機能をテストしながら、課題を一緒に探っています。データ共有には、Slackや電子メールを活用しています。
さらに重要なのは、月に一度オンラインでお互いの教員を含めたミーティングを行い、進捗を共有してフィードバックを得ている点です。この体制 ― 週ごとの協働、日常的なオンラインでの調整、そして月ごとのメンタリング ― によって、異なる専門性やスケジュールのバランスを取りながら着実な進展を目指しています。

お互いの指導教員を交えたオンラインミーティングの様子

設問8.研究費予算の使い道は?追加の予算があったら何ができた/したい?
私たちは予算のおよそ10%を、NLPタスクのためのOpenAIサービスに充てる計画を立てています。残りの資金は、学会参加や論文発表に活用する予定です。
さらに追加の予算があれば、アプリケーションをクラウド環境に展開し、世界中からアクセス可能にすることで、その影響力を一層高めたいと考えています。

設問9. この共同研究で学会発表や論文の執筆の可能性は?何パーセント?
現在の進捗状況と学際的なアプローチに基づき、学会での発表または論文誌での出版に至る確率は80%程度であると見積もっています。

設問10.この共同研究の今後の展望・抱負は?
私たちの現在の研究は米国、EU、日本に焦点を当てていますが、将来的な目標はグローバルに拡大することです。医療におけるAIは世界的な課題であり、より多くの地域を含めることで、多様な視点や固有の懸念を取り込むことができます。

設問11.お二人それぞれの将来の夢、目指す人物像は?
(松瀬)私は、分析的思考を活かし、熟慮した判断を行い、共感をもって研究に取り組むことができるキャリアを追求したいです。
(マナン)私は、現実の課題に対してAIを活用した解決策を提供し、AIをより多くの人々にとって身近で実用的なものにするイノベーターになることを目指しています。

設問12.プログラム生の後輩へ、院生融合プロジェクトや共同研究にチャレンジする事へのメッセージをどうぞ。
院生融合プロジェクトは、自分の専門分野を超えて学際的に取り組む挑戦を実現する機会です。共同研究は難しいことが多いと感じますが、それによって私たちは一人では得られない視点やアプローチが得られました。
プロジェクトを通じて、私たちは複雑な問題に革新的な方法で取り組み、協働の課題を乗り越え、自分たちの専門分野それぞれの強みと限界を理解することを学んでいます。その過程は要求が多いものですが、最終的には大きな成果をもたらし、この経験をかけがえのない資産にしてくれると考えています。